「生きるに値しない命」とは誰のことか
「生きるに値しない命」とは誰のことか―ナチス安楽死思想の原典を読む
- 作者: カールビンディング,アルフレートホッヘ,K. Binding,A. Hoche,森下直貴,佐野誠
- 出版社/メーカー: 窓社
- 発売日: 2001/11
- メディア: 単行本
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これは上記の「自殺自由法」の現実版のような本なのです。
こっちも気分が悪くなる本なので、やはりお勧めしません。
フィクションでない分余計悪いかも。
ここから下の感想は暗い内容なので、苦手な人は開かないでください。
「「生きるに値しない命」とは誰のことか」は1920年にドイツの法律学者と医者によって書かれた本「生きるに値しない命を終わらせる行為の解禁」の翻訳に批判的訳注がついた本です。
「生きるに値しない命を終わらせる行為の解禁」はタイトルからしてヤバいですが、内容は完全に悪い意味でヤバいです。
重度精神障害者は生きるに値しないから殺害しても良い、という主張が含まれる本です。
怪我や病気で瀕死の人や既に植物状態になった人は生きる価値を失っているのだから命を終わらせても良い、さらに重度精神障害者は始めから生きる価値がないのだから殺しても良いということです。
こんな本を書くのはどんな狂信的ファシストかと思うのですが、意外なことに著者達はそれほどファシストではなかったらしいです。
むしろ当時のドイツは第1次世界大戦で敗戦しており、経済的な余裕がない疲弊した状態だったため、健康な青年が戦死しているのになぜ社会のためにならない精神障害者を国の金で生かすのか考えからでてきた本です。
生真面目な学者と医者が考えすぎて極論に走ってしまったカンジです。
極論は無視されればよかったのですが、この本の内容はその後ナチスの大量虐殺の論拠として悪用されていきました。
この本を買った当時はこういう発想は過去の過ち、今では起らないものと思いましたが、今読み返してみてどうもそうではない気がします。
今、日本では後期高齢者医療制度が開始し高齢者からの反発が起っています。この反発の矛先が難病人や障害者に向かないとは限りません。こういった思想は狂気から広まるとは限らず経済的な事情から意図的に広められる可能性があり得ます。最近の日本の世論をみているとこういう方向に行きかねない雰囲気がなきにしもあらずです。
現実はフィクションよりもずっと恐ろしいです。