すらいむがあらわれた

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「終身旅行者」の昔と今

今日こんな本を読むなんて、それとも今日だから読むのか。
2年前はこの手の本には微塵も興味がなかったのですが。

終身旅行者(Permanent Traveler, PT)」とはあえて複数の国を行き来しながら暮らす人々のこと。ジプシーではなく逆に富裕層がやる生き方。
高額の税金を課せられる富裕層が自分の財産を守るため編み出した方法だそうです。
税金の重い母国を出て、税金の軽い外国に住み、ビジネスを営み、余暇を過ごすのです。

PTについて木村昭二氏の本が2冊出ていて、たまたま両方入手できて読んでいました。
こちらは1999年1月刊行

税金を払わない終身旅行者―究極の節税法PT
木村 昭二
総合法令出版
売り上げランキング: 31,939

こちらは2012年10月刊行

1作目と2作目の間に13年の月日が経っているのですが、読み比べると世の中の激変ぶりに愕然とします。

1作目は外為法が改正されて海外での資産運用ができるようになったものの規制も厳しくかけられた状態で、いかにタックスヘイブンをつかって節税するか、そしてついでに外国に住んで優雅な暮らしをするかという視点で書かれています。
お勧めされている移住先も南の島国バヌアツやスイス内にあるイタリア飛び地カンピオーネなど夢を感じます。

それが2012年刊行の2作目では節税なんて二の次になり、もはやサバイバルのためのガイドブックと化しています。なぜ日本から出るべきか?など問うまでもなく、冒頭からいかに日本から逃げるかで全開です。悲しくなりますね。

その一方、この13年の間にPTを巡る状況は激変しています。お金の預け先候補の筆頭だったスイスは法律が変わって資産の秘密が守れなくなり、プライベートバンクは詐欺ファンドをつかんで信用を失い、そもそもヨーロッパの経済情勢が悪化してスイスは移住候補から消えました。そして前作で著者イチオシだったバヌアツ地震津波の危険を考慮して候補から外れています。
そして代わりに候補に上がったのがシンガポールや香港などの東南アジアの国々。夢がずいぶん現実的に。そしてこれらの国々も10年後にどうなるかは予想しきれません。

私も含めて当面終身旅行者にはなれない身の上のみなさんにも、2012年版「終身旅行者」は日本が災害面、経済面でどんなリスクを抱えているのか、世界の国々と比べてどうなのかが詳しくまとまっているのでお勧めです。他の国も日本とは違う事情のリスクを抱えていることが多いのです。
世界にタックスヘイブンはあってもヘブンはなかなかないものだなって。